2023年11月18日土曜日

事業報告22 よりあい塾「歌って笑って『老い払い』」

 ●11月16日(木曜日) 10:00~ 

 今回よりあい塾(成人~高齢者対象)は、元西日本新聞の論説委員を務められた、ライターの 中川 茂 先生をお招きして、「歌って笑って”老い払い”高齢社会漫談とピアノの弾き語り」という内容で講演をしていただきました。演題にふさわしく?22名の高齢者(全員60歳以上)の参加があり、10時から始まって11時40分まであっという間に時間が過ぎていったようでした。


  講演は、前半、高齢化社会の現状と課題について、後半、中川先生のピアノの弾き語りで進められました。
 「高齢化社会の現状と課題」については、中川先生のレジュメをもとにご紹介いたします。

1)超高齢社会の現状、実態
 「人類の夢」を体現する長寿社会。人類が未経験の領域へ
  〇平均寿命  世界一 女性87歳(世界平均73.8歳) 男性81歳(世界平均69.1歳)
  〇健康寿命 女性75.4歳 男性72.2歳 ※平均寿命と大きな差。➡介護予防の普及
  〇高齢化率 2023年 国民の29.0% ➡2025年 30.3%へ(1966年=6.3%)
  〇元気な高齢者:一昔前より、10歳くらいは「若い」のでは
                  👇
 日本人は人類史上にない長寿を実現した。一昔前の王侯貴族も及ばない贅沢な
医療環境を享受している。だが、未体験の「超長寿社会」だけに、思いもよらな
い課題や問題が噴出し、年々深刻化している。                             

2)超高齢社会の課題
  〇社会保障給付費(医療、年金、介護)
   2000年  医療26兆円 年金41兆円 
   2025年  医療54兆円 年金60兆円 介護19兆円  …推計
  〇医療 「医学の進歩が国を亡ぼす」「延命治療は世界の非常識」との論調も
   一人年間平均 75歳以上95万円、75歳未満は22.6万円
   国保険料、2012年の月平均7600円➡2025年9300円
   人口当たりCT、MRIの台数は世界で断トツ。極まる高度医療。
  〇要支援・要介護  「介護の社会化」の当初理念は行き詰まり、大きく後退
   介護保険料 2000年 月平均2911円➡2025年 8200円へ
  〇介護職員  人手不足。外国人労働者で補えるか?
   介護職員の平均給与は約22万円。全業種平均より10万円安い。
   働きながら介護する人の増加。介護離職が年間10万人。
  〇認知症高齢者 「恍惚の人」(有吉佐和子)の問題提起の重さ!
   2020年 602万人。2025年 730万人。 半数は自宅介護。
   認知症の行方不明届け出、年間17000人。うち約500人が死亡。
                  👇
  ・経済的にゆとりのある高齢者は、負担増、給付削減を甘受する。 
  ・終末期医療の見直し。無理な延命治療より「看取り」を重視。  
  ・高齢者の社会参加を促進。就労できるうちは、何らかの就労を。 
  ・介護予防の徹底。(結果として健康で、医療費軽減につながる) 
  ・消費税率の引き上げ。加えて、相続税課税や資産課税の強化など。
  ●政治の思い切った決断、リーダーシップが要る。        
      「シルバー民主主義」のままでは、改革は進まない●   

3)人権面での問題
  高齢者は非生産的なのか、疎まれ、排除される存在なのか。そうではない。
  〇孤立化、孤立死  未曽有の「多死社会」。増える無縁仏。
   独居高齢者は2022年で約672万人。
   孤独死は2010年で推計約32000人。現在はさらに増加か。
   独居老人の45%が「孤独死を身近に感じる」。
  〇介護に伴う虐待  2006年に高齢者虐待防止法施行
   暴力、暴言、無視、介護放棄、ベット固定、預貯金の無断使用等。
   家族介護の虐待。年間約17000件。悪徳商法被害、成年後見人の不正等も増加。
  〇生活困窮  「下流老人」の言葉が登場。これでいいのか。

4)楽しく生き抜くにはどうすべきか。
  長寿は素晴らしい。嘆くのではなく、長い「第二の人生」を生き生き
  と充実させる。
  カギは「高福祉」「高負担」に加える「高参加」。               
  とにかく「社会とつながる」「他者とつながる」ことだ。社会参加を。      
  〇生き生き老後の秘訣
    ●社会とつながる ●地域とつながる ●人とつながる
  
  「高齢者の就業率が高い地域ほど、医療費が安く平均寿命は長い」
   ➡福岡県:就業率全国で45位。高齢者一人当たり医療費全国トップ。
    ※このままでは、福岡県の国保制度が全国で最も早く、行き詰まりかねない。

   ➡長野県:男女とも長寿日本一。高齢者一人当たりの医療費は日本最低。
    ※秘訣は高齢者の就業率の高さ。公民館数も1525館と日本一。
     スローガン「ピンピンコロリ」「人生二毛作」
        現在「誰にでも居場所と出番がある信州」

5)社会参加には多くのメリットがある
  ・健康維持。体を動かす高齢者ほど健康状態がいい。
  ・社会参加は認知症のリスクを低減する。
  ・社会参加をしない人ほど、要介護度が高くなる。生存率が低下。
  ・男性は現役時代の肩書にこだわりすぎ、地域デビューができない。
  
  〇個人の対応。とにかく自宅にこもらず社会参加を。年齢など関係ない。
  ・アルバイト就労でも、ボランティアでも、趣味でも、自治会活動でも、
   通学路の旗振りでも、なんでいいから、とにかく、外出して社会とつながる。
  ・米の疫学調査「孤独な人は人とのつながりを持つ人と比べ、早死のリスク50%UP。」
  ・60歳以上「親しい友人がいない」日本31%、独13%、米14%。
  ・好奇心を持ち続ける、目標を持つ、興味関心を失わない、恋愛も。
  ・人は加齢で老いるのではない。夢や感性を失ったら老いるのだ。
  ・【就労】は、生きがいにつながる。生活の規則正しさ。リズムにつながる。
    健康維持。医療費低減。社会の中に居場所ができる。孤独を防ぐ効果。

  〇地域社会の取組。鍵はネットワーク、柔らかい近隣関係、ご近所の底力
  ・家族の絆を昔のように強めるのは難しい。いい意味での「お節介社会」を。
  ・「高齢者見守りネットワーク」が必要。
    近隣の高齢者や家族介護の異変を察知したら
       ➡自治会、民生委員等を通じて「地域包括支援センター」の専門職へ
  ・福岡市高齢者などの「見守りダイヤル」 080-9100-0883

  「ありがとう」「お互い様」が、ごく普通に行きかう地域社会に

 後半は、中川先生のピアノ弾き語りです。ある講演会の参加者から「先生はどんな趣味をお持ちなんですか?」と尋ねられたそうです。仕事の虫だった先生は、これといった趣味もなかったそうですが、学生時代にギターを弾いて音楽に親しんでいた(和音のコードは分かる)ので、中古のキーボードを購入されて好きな曲を演奏され始めたそうです。62歳を過ぎてからです。
 左手は和音中心で、右手でメロディーを奏でられながら、秋の歌からクラシック、ビートルズとたくさんの歌を披露していただきました。参加された皆さんも同年代の方だったので、事前に配られた歌詞カードを見ながら一緒に口ずさまれていました。

●参加された皆さんからの感想をご紹介します。
 
 ・先生のお話、最初から最後まで素晴らしかったです。なるほどと頷けること
  ばかりでした。これから行く道・帰る道みたいな…。三世代、四世代で子ど
  もの頃住んでいました。今は、核家族で、それぞれ別になり冠婚葬祭だけし
  か顔を合わせない…。
 ・大変有意義なお話ありがとうございます。生きていくうえで無駄な時間を使
  わないように気を付けて生活したいと思います。
 ・社会参加の大事さを再認識しました。益々参加します。ありがとうございま
  した。
 ・79歳、すごく為になる話が聞けました。先生の生き方で、ピアノを選ばれて
  話の最後にみんなで一緒に!すごく楽しく良かったです。
 ・地域の中で、社会とのつながり、仲間づくりを大切にすることを改めて確認
  することができました。
 ・おもしろい話で聞き入りました。ピアノもとても感動しました。私もいろい
  ろやっていますが、なかなか人前で出来ません。今後も公民館の色々な行事
  に出席したいと思っています。

 END